人と「違うこと」だけでなく「同じこと」にも注目すると私達の多様性がぐっと高まるのはなぜでしょうか。
先日、SNSで「多様性と教育。子供はどうやって多様性を学べるか」という話題になり、「多様性については、日本ではそもそも大人の意識が後れていて、まずは大人たちが多様性を学ぶ必要がある」という意見を目にしました。
世界的に見て日本は相当に均質性が高い国(つまり多様性が低い)です。他方、より異質なものが混在し多様性の高い組織や社会が、変化に適応しやすいという意味での強靭さ・レジリエンスがあるとされています。
個人レベルでも、まず自分自身の資質や考え方をより多様にすることでレジリエンスも高まりますし、多様性の考え方をうまく使えるようになると、他者により寛容になれて、ひいては自分自身にも寛容になれるといったメリットもあります。
子育て世代にとっては、子供は親の考え方に大きく影響を受けますので、親が多様性を受け入れるという姿勢ですと子供にもそれが伝わりやすくなります。
多様性とは、違うことだけでなく同じことにも着目すること
ではその多様性という資質はどのように身に付けられるのでしょうか。
多様性を身につけるとは、違うことだけでなく同じことをも見つけることが必要です。
多様性というと、何だか「国籍の違う人を受け入れなければいけない」といった、「わかりやすい」属性に注目して、自分とは違う属性の人をとにかく尊重すること、と思われがちです。「わかりやすい」属性とは、性別、年齢、国籍などです。
例えば、ある企業に男性も女性もいて、あらゆる年齢層の社員がいて、加えて、様々な国籍の社員がいると、その企業は多様性が高い、ということです。
実はここに落とし穴があります。性別や人種などの目に「わかりやすい」属性だけを見てしまうと、実は、一見多様なように見えても実はその多様性がもたらす良さを発揮できません。そして、多様性によって強い組織や国を作ると言ったことがなかなかできないのです。
最近のアメリカでの研究成果でも明らかになっていますが、単に「女性」、「国籍」、「年齢」などわかりやすい属性だけでもって多様性を高めた組織と、能力や経験やスキルや価値観といった一見外からは見えにくい属性によって多様性を高めた組織を比べた場合、前者のほうが組織としてのパフォーマンスが劣るだけでなく悪影響も出てきます。
目には見えにくいけど、同じこと
性別などの「わかりやすい属性」ではなく、どんなスキルや才能があるのか、どんな興味関心があるのか、どういった価値観で生きているのか、といった、「外からは見えにくいこと」に着目する必要がある、ということです。そういった「外からは見えにくい」内的な性質について、他の人との共通点や同じところに注目する、ということです。
つまり、多様性とは、実は、性別といったわかりやすい属性だけに注目して異なることを受け入れることではなく、そういった属性を取り払った上で他の人との同質性を見ることなのです。
すぐにできる!多様性をはぐくむには
では、こういった、同質性を見ることで自分のなかの多様性をはぐくむには、どうしたら良いでしょうか。
実は、それは発想を変えることで、日常的に行うことができます。
例えば、前回のブログ記事で、私と全く異なっているかに見えた女性(ブルカを身にまとったアラブ人女性)が実は私と同じ価値観をずいぶん持っていたという話を書きました。
同じように、国籍や年齢などバックグラウンドが違った人でも、例えば同じ音楽やスポーツや映画が好きだという共通点・同質性があるかもしれません。また、仕事やプロフェッショナルな観点からも、一見違うように見える人でも、社交性が高くて営業が上手かったり、コンピューターが好きでIT関連のスキルを持っていたり、実は共通のスキルや才能や資質があるかもしれません。
こんな風に、年齢や国籍などの「わかりやすい属性」だけでなく、各々が持っている資質や価値観やスキルや才能といったことに注目すると、世界中の様々な人との同質性が見えてきます。
ひいては、私たちの多様性をより高めることができます。
それでは。
【参考記事:高橋祥子「生命の『失敗許容主義』をビジネスに活かす」2021/1/8 (News Picks)】